オルティンドーとは、モンゴル民族が長く歌いつづけている伝統的な民謡のひとつである。
直訳すると、”長い歌”という風に言われ、一息で草原にどこまでも長く響かせ、人々の中に深く溶け込んでいる歌唱法である。
オルティンドーは、大きく以下の3つに分かれている。
・ベスレク オルティンドー
・オルト ドー
・アイザム オルティンドー
中でも、”アイザム オルティンドー”(aizam urtin duu)は、かなりの技術が必要となってくる難易度の高い歌唱法で、7つの母音を美しく伸ばし、エグシグ トモールトという”母音を紡ぐ”歌唱法を基本とし、ショランハイという裏声、チメグレフという装飾、ビトゥ アミスガーという閉鎖呼吸(すべての息を声に変える)、シグシフという揺れ、など様々な技法が盛り込まれている。
この長い歌はもちろん祝い事などでも歌われるが、普段から牧民達は、羊を追うとき、馬に乗るとき、乳を搾るときなどにも歌う。日常の中で欠かすことの無い、生活の習慣であり、人々の中にエネルギーとして注がれ癒される要素なのである。
日本にもこういった民謡は主に北東部(北海道、東北)地方に残っている。
・江差追分(北海道・江差町)
・小諸馬子唄
正確にはまだ明らかにされてないが、追分や馬子唄は音階からもオルティンドーによく似ており、現在のモンゴル地方→韓国地方→日本地方へ伝わったと言われている。
歌詞の内容としては、主に、自分の相棒のようにされる馬や動植物のことが出てくることが多い。
色や特徴が様々に表された馬の種類も歌詞にそのまま使用されている。
・ハリオン(駿馬)
・ボル(栗毛の馬)
・シャルガ(淡黄色の馬)
他には、山、植物、川、雲、丘など、自然について歌われている。
殆どのオルティンドーの出だしはこのように、自然と動物について歌われているが、その歌詞のつづきには、父、母、恋人、子供(娘)など、遠く離れている故郷や家族、恋人への気持ちをさびしく歌って哀愁を音階と共に漂わせている。
歌詞がわからない日本人にとっても、オルティンドーの音階はなぜか懐かしく感じられる。
ぜひ、機会があれば、日本でもこの不思議なオルティンドーを聴いていただきたい。